皆さまこんにちは。MH Packaging の北村です。
印刷現場において、刷色の安定化は多くの方が抱える課題ではないでしょうか。そこで本日は、今回は刷色の安定化のコツのひとつ「インキ呼び出し回数設定」についてお話ししたいと思います。
インキ呼び出し回数は通常「1:3」
一般的に、インキ呼び出し回数は「1:3」に設定されています。これは、3枚の印刷ごと(版胴が3回転するごとに)インキ呼び出しローラーがインキ元ローラーからインキを取り出すという意味です。
たとえば、試刷り作業でインキスライダー(盛り量)を調整しながら、30枚の用紙を数回印刷する場合、30枚の印刷中にインキが元ローラーから呼び出される回数はおよそ10回です。
呼び出されたインキが十数本のローラーを経由し、版面に到達するまで(=「自分がスライダーを調整した結果」が反映され始めるまで)には一定の時間がかかります。具体的には、インキスライダーの調整結果が実際に反映され始めるまでには、約100枚の印刷が必要だと言われています。
これをイメージすると、刷色の安定には最低でも100枚以上の印刷が必要だと考えられます。
特に、極小の絵柄においては、インキ量のコントロール、すなわち刷色の安定を図るのはインキスライダーだけでは難しい場合があります。これは「インキ調整幅」が狭いため、濃度調整や安定化がより困難になるためです。
極小絵柄におけるインキスライダーの調整と呼び出し回数の最適化
図のように、通常の「1:3」設定ではインキスライダーの開閉量が約10以下と少なく、極小絵柄に対しては適正なコントロールが難しくなります。このため、濃度の微調整が不可能となり、印刷を続けるとインキが過剰に供給されて濃度が上がりすぎることがあります。仮に開閉量を「5」や「3」に下げても、濃度が下がるまでには多くの用紙と時間を要します。濃度がなかなか下がらないからといって、インキスライダーの開閉量を「0」にすると、今度は供給量が不足し、急激な濃度低下が発生し、安定した印刷が困難になります。
そのため、インキ呼び出し回数を「1:6」や「1:9」などに制限し、インキスライダーの開閉量を増やして印刷を行うことをお勧めします。これにより、インキの調整幅が広がり、スライダーによる濃度コントロールが容易になるため、刷色の安定性も向上するでしょう。