Fintech – インドネシア

皆さま、こんにちは。MH Packaging Inc.の吉岡です。

2週間前にインドネシアの投資環境についてお話しさせていただきましたが、先週、ジャカルタに出張する機会がありましたので、その際の様子をご報告させていただきます。ジャカルタの投資環境に関する最新の情報として、ぜひご参考いただければ幸いです。

今回の出張では、私がかつて駐在していたSudirman駅周辺に宿を取り、少し散策をしてみました。その際、Sudirman駅近くで暗号資産プラットフォーム「Ajaib Kripto」の大々的な広告を目にしました。インドネシアでは、2021年時点で15歳以上の銀行口座保有率が52%にとどまっている状況ですので、この暗号資産プラットフォームの積極的なプロモーションに少し驚きを覚えました。しかし、私は新しいことに興味を持つ性格でもありますので、「Ajaib」について詳しく調べてみました。

近年、インドネシアでは、デジタルに精通し、貯蓄の収益を最大化したいと考える中流階級の消費者の増加に伴い、オンライン投資が急速に成長しています。その中でも、米国のRobinhoodにしばしば例えられる新興企業Ajaibの躍進は、東南アジア最大の経済大国におけるオンライン投資ブームを象徴しています。

Ajaibは設立からわずか3年でユニコーン企業となり、東南アジア初の投資アプリとして評価額が10億ドルに達したインドネシア企業としては7社目となりました。これに続く他のインドネシアのユニコーン企業には、Gojek、Tokopedia、Bukalapak、Traveloka、OVO、Xenditが名を連ねています。

Ajaibは2021年に総額2億4,300万ドルを調達しました。同社に投資している企業には、日本のソフトバンクグループのベンチャーキャピタル部門、香港の億万長者である李嘉誠氏のホライゾン・ベンチャーズ、そして地元のベンチャーキャピタル企業アルファJWCなどが含まれています。

Ajaibの株式取引アプリは投資信託に特化しており、ユーザーは投資信託の売買を行うことができます。Robinhoodとは異なり、Ajaibは手数料無料の取引を提供していません(収益性を達成するためには合理的な判断ともいえます)。それでも、同社の取引手数料は競合他社、特に地元の証券会社が提供するプラットフォームよりも低い価格設定となっています。また、Ajaibは金融包摂を掲げ、顧客の資本要件を免除する初のオンライン株式取引プラットフォームであるとしています。

前述のように、インドネシアの銀行口座保有率はわずか52%ですが、国土には2億7,700万人もの人口が存在し、デジタル投資市場の潜在的な規模は非常に大きいです。これが、Ajaibがわずか3年でユニコーン企業へと成長できた理由を裏付けています。Ajaibによると、2021年時点での顧客数は約100万人に達し、同年8月末時点でインドネシア証券取引所は国内の個人株式投資家を約260万人と推定しています。また、2021年の初めから8月までの8か月間で、個人投資家はIDX(インドネシア証券取引所)全体の取引額の59%を占めており、2019年の37%から大幅に増加しています。

Ajaibに加え、2021年には他の株式取引アプリも多額の資金調達を行っており、オンライン投資市場の成長が続いています。

以上のことからインドネシア国内のFintech市場の将来性について考察してみました。

1. 未銀行化・金融包摂の推進

インドネシアの銀行口座保有率は依然として低く、2021年時点では約52%にとどまっています。つまり、約半数の成人が銀行口座を持っておらず、金融サービスへのアクセスが制限されています。Fintechはこうした未銀行化の人々に対して金融包摂を提供する手段として非常に有望です。モバイルバンキング、デジタルウォレット、P2PレンディングなどのFintechサービスは、インターネットとスマートフォンの普及に伴い、従来の銀行サービスに代わる柔軟な手段を提供し、広範な層に金融アクセスを拡大する可能性があります。

2. スマートフォン普及率の高さとインターネット環境の整備

インドネシアではスマートフォンの普及率が急速に増加しており、2022年にはインターネットユーザーが2億人を超えました。モバイルファーストの経済環境の中で、Fintechサービスはオンラインプラットフォームを通じて多くの人々にリーチできるため、これが市場成長の大きな原動力となります。特に、モバイル決済やデジタルバンキングはスマートフォンを活用して、銀行口座を持たない人々にも簡便に金融サービスを提供できるため、今後さらに普及が進むと予想されます。

3. 若年層と中流階級の増加

インドネシアは人口の約半数が30歳未満という若年層が多い国であり、彼らは新しい技術やデジタルサービスに対する適応力が高いです。このデジタルネイティブ世代は、Fintechサービスの主要なユーザー層となるでしょう。また、中流階級の成長に伴い、貯蓄や投資の需要が増加しており、これに応じたFintechサービスが求められています。たとえば、Ajaibのような投資アプリや、分散型金融(DeFi)プラットフォームなどが今後さらに利用されるでしょう。

4. 政府のサポートと規制の進展

インドネシア政府は、Fintech市場の成長を促進するために積極的な支援と規制の整備を進めています。たとえば、インドネシア金融庁(OJK)はFintech企業に対する規制枠組みを整え、スタートアップや新しい金融サービスの発展を促進しています。政府のサポートにより、規制の明確化が進み、投資家や消費者の信頼性が向上し、業界全体の成長を後押しすることが期待されています。

5. 多様なFintechサービスの登場

インドネシアのFintech市場は、モバイル決済、P2Pレンディング、デジタルバンキング、暗号資産取引、保険テック(Insurtech)、ロボアドバイザーなど、多様なサービスが存在しています。特にモバイル決済の分野では、Gojekの「GoPay」や「OVO」などが広く普及しており、これらのサービスはキャッシュレス社会の実現に向けた重要な役割を果たしています。また、P2Pレンディングは、銀行から融資を受けにくい中小企業や個人に資金を提供する手段として急成長しており、地域経済の発展にも貢献しています。

6. スタートアップとユニコーン企業の急成長

インドネシアでは、AjaibやGojek、Bukalapakなど、ユニコーン企業がFintech分野で急成長を遂げています。特に、Gojekは多機能なスーパーアプリとして金融サービスを統合し、膨大なユーザーベースにアクセスできるプラットフォームを提供しています。このような企業の成功は、インドネシアFintech市場の将来性を強く示しています。また、国際的な投資家からの注目も高まり、多額の資金調達を受けることで、さらなる成長が期待されます。

7. 地域競争とイノベーションの加速

東南アジア全体がFintech市場での競争が激化しており、シンガポール、マレーシア、タイなどと競争する中で、インドネシアも競争力を維持しつつイノベーションを推進する必要があります。これにより、独自の技術革新やサービス開発が進み、Fintech市場のさらなる成長を促進するでしょう。

まとめ

インドネシアのFintech市場は、未銀行化人口の多さ、スマートフォンとインターネットの普及、政府の支援、そして中流階級や若年層の成長に支えられ、今後も大きな成長が期待されています。また、多様なFintechサービスの台頭とユニコーン企業の成功が、さらなる市場拡大の可能性を示しています。特にモバイル決済やP2Pレンディングなどの分野では、国際的な競争の中で技術革新が進み、インドネシアがFintech市場のリーダーとして位置付けられることもあり得ます。

最後に、人材関連のコンサルの方によると、2年前と比較してこのようなTech関連の仕事に従事される現地の方々の給料は3~4倍に跳ね上がっているそうです。日本人よりも稼いでいるとか…。